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2024/09/27

「エンベロープFrom」と「ヘッダFrom」の違いとは?

「エンベロープFrom」と「ヘッダFrom」の違い

メールの送受信時には、見えない部分で多くの情報が交換されています。その中でも特に重要なのが、エンベロープとヘッダーの情報です。これらはメールの送信先や送信元を決定するために不可欠であり、それぞれに「From」と「TO」の情報が含まれています。メールを開くと送信者(From)が表示されますが、表示される内容が実際の送信元と一致するとは限りません。メールソフトでメッセージを作成すると、自分のアドレスが自動的に差出人として設定されるため、送信元と送信者が同じ意味だと思う方が多いようですが、実際には異なります。この仕組みを理解するためには、エンベロープとヘッダーの役割について知る必要があります。メールシステムの裏側にある仕組みを理解することは、セキュリティの観点からも非常に重要です。不正なメールの送信元を見破る手がかりにもなります。



メール送信の仕組み
メールの送受信は、サーバーを経由して行われ、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)というプロトコルが使用されます。この仕組みを郵便に例えると、メールが手紙、サーバーが郵便局、SMTPが配達員に相当します。手紙(メール)を作成して送信すると、郵便局(サーバー)で選別され、配達員(SMTP)によって宛先に届けられるのです。
エンベロープは、メールがインターネットを通じて正確に送受信されるために必要な情報を含んでいます。これは物理的な手紙の「封筒」に相当し、送信元と送信先のアドレスといった基本的な情報(SMTPサーバーが使用する)を含んでいます。このエンベロープ情報は、メールサーバー間での送受信(ルーティング)に使用されますが、通常、最終的な受信者には表示されません。
一方、ヘッダーはメールの内容(本文)の前に配置され、メールに関するメタデータを含んでいます。ヘッダーには、送信者(From)、受信者(To)、件名(Subject)、送信日時(Date)などの情報が含まれており、これらはメールのコンテキストを受信者に提供するために使用されます。メールクライアントはこのヘッダー情報を基に、受信者に対して詳細な情報を表示します。



エンベロープTo/From と ヘッダTo/From
■エンベロープFrom(Envelope-From)
郵便でいうところの封筒に書かれる差出人に相当するもので、メールでは実際の送信者(送信元)を指します。通常、エンベロープFromは配送が正常に完了した場合には参照されませんが、何らかの理由でメールが送信先に届かなかった際には、このアドレス宛にエラーメッセージが返送されます。


■エンベロープTo(Envelope-To)
これは、郵便でいう封筒に記載される宛先に相当し、メールでは送信先のアドレスを指します。メールの配送において、この宛先が正しく存在していればメールの送信が可能です。


■ヘッダFrom(Header-From)
郵便でいう便箋に記載される差出人に相当し、メールではメールクライアント上で表示される差出人(Fromアドレス)に該当します。受信メールボックスに表示されるため、一般的に「差出人」と認識されるのはこのヘッダFromに記載されたアドレスです。しかし、ヘッダFromは送信者が自由に設定できるため、実際の送信者とは異なる情報を表示させることも可能です。


■ヘッダTo(Header-To)
郵便でいう便箋に記載される宛先に相当し、メールではメールクライアント上で確認できる宛先にあたります。これは「To」および「CC」の欄に表示されるアドレスです。



エンベロープとヘッダが分かれているメリット・デメリット
■メリット①:転送や代理送信など、柔軟なメール配信が可能
メールを転送する際でも、正式な送り主からのメールとして送信できます。メール転送機能を使うと、転送を行う差出人がエンベロープFrom(封筒の送り主名)に設定されます。この際、転送前の送り主情報をヘッダーFrom(便箋の送り主名)に設定し直すことで問題を回避できます。また、大量のメール配信を行うために外部のメール送信サービスを利用する場合にも便利です。対策を取らないと、配信サービス会社が送り主となってしまい、受信者が混乱する可能性があります。メール配信時に顧客に表示したいアドレスをヘッダーFromに設定し直すことで、誰からのメールなのかを明確にすることができます。


■メリット②:BCC機能の利用が可能
Toフィールドが分かれているため、BCC(Blind Carbon Copy)機能を利用できます。この機能により、ヘッダーToの宛先を非表示にし、エンベロープToの情報のみを編集することができます。BCCを使うと、メール受信者は他のBcc宛先を見ることができないため、公開したくないメールアドレスを隠したまま複数の受信者にメールを送ることができます。この特性を生かして、多数の顧客にビジネスメールを送信する際などに利用されます。


■デメリット:なりすましのリスク
エンベロープとヘッダーが分かれていることで発生する代表的な問題が「なりすまし」です。なりすましとは、有名企業などの名前をかたって相手を信用させる詐欺行為です。なりすましメールは、エンベロープFromとヘッダーFromが一致していなくても送信できる仕組みを悪用しています。ヘッダーFromに偽の情報を記載し、受信者を信用させてメールを開封させます。開封したメールからフィッシング詐欺に誘導したり、標的型攻撃を仕掛けたりする悪意ある業者が存在します。



エンベロープ From の確認方法
エンベロープFromの情報は、メールヘッダー内の「Return-Path」フィールドを通じて確認できます。SMTPプロセスを経てメールが送信される際、エンベロープFromの情報は最終的に受信サーバーによって「Return-Path」として記録されます。これにより、メールの送信元や配送エラーが発生した場合にエラーメッセージを返すべきアドレスを特定するための重要な手がかりとなります。メールクライアントの「ソースを表示」や「詳細情報」などのオプションを使用すると、エンベロープFromを含むメールヘッダー情報を確認することができます。具体的な手順はサービスによって異なりますが、メニュー内の「詳細」や「オプション」などの項目を探してみてください。エンベロープFromは、特にメールの配送問題を診断したり、送信元を詳しく調査したりする際に役立つ情報です。



まとめ
Eメールを正しく運用するためには、メール送信時の仕組みを理解し、送信者と受信者の双方が安心できる環境を整えることが重要です。